研修が始まって1週間は、私はちょっとしたホームシックになってしまいました。夕食はホストファミリーと食べていましたが、終わればさっさと部屋にこもりがちになったのです。そんな私をホストマザーが気遣ってくれました。部屋に戻った私をゲームに誘ったり、趣味のキルトを教えたりと、とにかく私を引っ張りだそうとがんばってくれるのです。子どもたちもよく話しかけてきました。しかも答えがYesとNoで答えられる程度のやさしい質問ばかり。それなら会話も簡単です。
ホストファミリーのあたたかい支えで少しずつ生活に慣れていきました。特に英語は2週間を過ぎたころからよく聞きとれ、会話もできるようになったのです。
ある日、次女が宿題で悩んでいました。よく見ると理科です。しかも私の専門の生物。そこで教えてあげると次女はとても喜んでくれました。これが英語の自信になったようです。
学校の授業はフリートークが中心でした。一つのテーマについてみんなで会話をしていき、文法的にまちがっているところがあれば、その都度、ホワイトボードに書いて先生が説明をしていきます。私は複数形のSのつけ方がまちがっており、指摘されました。
学校の友だちも増え、授業が終わると近くのニューベリー通りへいっしょに買い物に出かけていました。ここにも変化が起こりました。最初はほとんど店員さんと会話ができなかったのですが、2週間ほど過ぎると「他に色やデザインはないの?」などと注文を出せるようになっていたのです。
ロシアから来た学生の中には、私の母親くらいの年齢の女性がいます。その人から娘の誕生日プレゼントを選んでほしいと言われたので、いっしょにショッピングモールに行きました。このときも店員さんと商品や値段などで結構やりとりし、20歳くらいの女性が好みそうな香水を選ぶことができました。慣れてくるととにかく英語を使うのが楽しいんです。台湾の学生は私に日本語を教えてほしいと言ってきました。私はそれなら逆に中国語を教えてと頼んだのです。その会話のすべては英語です。英語を介していろいろな交流が広がっていきました。
|